先日公開した、本プロジェクトのメッセージをお伝えする動画の第2弾。皆さまご覧いただけたでしょうか?
まだご覧いただいていない方はこちらをどうぞ!
この動画にも出てくるフレーズ、「よじ登りでかかるチカラは体重の約半分」は、東京都で実施している、セーフティ・レビュー事業の研究結果を踏まえたものです。子供は思っている以上に力があり、高さのある家具にもよじ登れることがわかりました。
この事業では、1年ごとに事故種別等のテーマを決め、データ分析や子供の行動特性に関する研究を行います。その結果を事業者の製品開発や家庭等での事故予防に役立てていただきながら、社会全体で子供の事故を減らしていくことを目的としています。
今年度は、乳幼児の事故でも特に発生件数の多い「転落」による事故をテーマに研究を行いました。その一部をご紹介しますので、ぜひ「転落」によるケガ予防の参考にしてください。
東京消防庁の救急搬送データを見ると、階段、ベッド、椅子、ソファなどから落ちる事故が多いことがわかります。しかし、どういった状況で、どのような形状の家具から落ちたのか、詳しい内容は知ることができません。
そこで、都内にお住まいの子育て世代(未就学児の保護者等)の方にアンケートにご協力いただき、転落した、または転落しそうになった事例を1,381件集めました。さらに、74名の方にインタビュー調査や転落した家具の画像提供にご協力いただくことで、より詳しい事故の状況を分析することができました。
この調査でわかった内容の一部は下記の通りです。
これまでの取組で子供の転落に関わる状況がわかってきましたが、リスクを予測したうえで効果的な予防策を検討するためには、子供の身体能力データも欠かせません。
そこで、保育園に協力していただき、0歳から3歳までの乳幼児を対象に、よじ登り能力(乗り越えられる高さ、および、乗り越える際に物体にかかる力)および、寝返り能力(寝返り・ハイハイ・歩行のスピード)を計測しました。
よじ登り能力の計測には、特製の計測機を使いました。センサーをつけてよじ登る際にかかった力を測ったり、よじ登る高さを10cmずつ高くできたりするものです。計測は、高さを上げながら、無理のない範囲で、よじ登ることができる高さまで何度かよじ登ってもらいました。
小さな体ですいすいと段差をよじ登る子供がたくさん! 見ている私たちもびっくりです。
のべ53名の園児の皆さんが参加してくれた結果、次のようなことがわかりました。
これらの調査結果を踏まえて、家庭内の「転落」を予防するため以下のような内容を提言として取りまとめました。
お子さんの体重と倒れる可能性のある家具の重さを比べてみたり、よじ登って落ちる可能性のある家具の高さや床の材質を調べてみたりして、事故予防策を試してみましょう。
この事業では、今後も子供の成長・発達段階や特性にあった効果的な予防策を研究していきます。また、皆さんが取り組みやすいよう、その予防策をデータや事例を用いて発信していきます。
ぜひ、子供の成長・発達段階や特性にあった事故予防に取り組んでみませんか。
※調査結果と提言の詳細は、手軽に読めるポケットブックと報告書をご覧ください。
東京工業大学工学院機械系教授
西田佳史先生
子供にとっては家具も遊具のようなもの。登っちゃダメと言っても聞いてくれないこともありますね。
家具によじ登って窓から転落するといった絶対に避けたい事故は、環境にアプローチする予防策を取り、確実に防ぎましょう。
西田佳史先生
工学者・東京工業大学工学院機械系教授。人工知能やビッグデータ等を活用して人の行動や心身機能を計測し、子供や高齢者が安全な生活を継続するための技術を研究。子供の事故予防についても長年にわたって取り組んでいる。
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