近年、子どもの自転車に関する事故は増加傾向にあります。事故を防ぐには、発生しやすいシチュエーションを知り、親子で予防策を考えることが必要です。本記事では、子どもの自転車事故の特徴と予防のポイントを説明します。
子どもの自転車事故は、大きく次の2つのケースに分けられます。まずは、それぞれの現状について見ていきましょう。
・自転車の走行中に起きた事故 ・自転車への同乗中に起きた事故 |
警視庁によると、令和5年に東京都内で自転車走行中に起きた事故は、15,926件。このうち幼児、小学生、中学生など15歳以下が関与した事故は1,420件で、令和3年から3年連続で増えています。また、令和5年に自転車走行中の子どもが主な原因となって起きた事故(第1当事者)は765件、自転車走行中の子どもが巻き込まれた事故(第2当事者)は655件という内訳となっています。
(資料)警視庁『都内自転車の交通事故発生状況 自転車事故の推移』を基に作成
(資料)警視庁『都内自転車の交通事故発生状況 自転車事故分析資料』を基に作成
自転車の二人乗りは、道路交通法第57条に基づき、原則として禁止されていますが、東京都道路交通規則第10条により、16歳以上の運転者が幼児用座席に小学校就学の始期に達するまでの者1人を乗車させるとき、幼児(6歳未満の者をいう)1人を子守バンドなどで確実に背負っている場合などが、例外的に認められています。消費者庁・国民生活センターによると、走行中の自転車後部に同乗していた子どもが巻き込まれた事故は、2019年から2023年の5年間で207件発生しています。
次に、事故の特徴をケースごとに説明します。
警視庁がまとめた『小学生の交通人身事故発生状況』令和6年中のデータによると、自転車の乗用中に起きた事故は、車両同士の出会頭での衝突が274件(42.0%)と多く、自転車単独の自損事故の188件(28.8%)が続きます。
(資料)警視庁『小学生の交通人身事故発生状況(令和6年中)』を基に作成
衝突によって自転車から投げ出されて頭部外傷を負った事例や、自転車のハンドルバーに掛けていた傘が前輪のスポークに引っかかって転倒し内臓を損傷した事例など、深刻な怪我につながる事故も発生しています。
自転車走行中は、同乗している子どもから目を離さざるをえない瞬間がどうしてもあるので、スポークに足が巻き込まれる「スポーク外傷」や転倒、身体のはみ出しによる障害物への接触などの事故が発生しています。身体のはみ出しによる接触事故では、大腿骨を骨折するなどの重篤なけがを負った事例も発生しています。
「スポーク外傷」については、政府広報オンラインで紹介されています。
また、保護者が子どもを抱っこして自転車を走行していた際に、転倒したり、子どもが転落したりしてけがをしたという事故も見られます。子どもを抱っこして自転車に乗ることは道路交通関係法令違反です。
子どもを抱っこした状態で転倒し、子どもの頭部が路面に打ち付けられて重篤なけがを負った事例も発生しています。
子どもの自転車事故を防ぐために意識すべきポイントを3つご紹介します。
自転車事故の防止には、何よりも交通ルールを守ることが大切です。次の「自転車安全利用五則」を覚えておきましょう。
▼自転車安全利用五則
1.車道が原則、左側を通行 歩道は例外、歩行者を優先 2.交差点では信号と一時停止を守って、安全確認 3.夜間はライトを点灯 4.飲酒運転は禁止 5.ヘルメットを着用 |
ほかにも、以下のようなルールがあります。無意識のうちに違反していないか、改めて確認しましょう。
● 走行時にスピードを出し過ぎない
● 運転中のスマートフォン・携帯電話の使用禁止
● 運転中のイヤホン・ヘッドホンの使用禁止
● 傘差し運転禁止
● 自転車の点検や整備を行う
全ての自転車利用者は、道路交通法第63条の11に基づき、乗車用ヘルメットを着用することが努力義務として定められています。
保護者は、子どもが自転車を運転するときは、安全基準を満たした「SGマーク」等が付いたヘルメットを適切に着用しているか確認しましょう。
また、自転車の同乗時に多いスポーク外傷や転倒、身体のはみ出しによる接触事故を防ぐため、幼児用座席に子どもを乗せるときには、ヘルメットやシートベルトを適切に着用しましょう。
ヘルメット着用による自転車の事故予防策(頭部の保護など)は、以下のサイトでも紹介されています。
子どもを自転車に同乗させる場合は、幼児座席を使用するか、子守バンドなどで確実に背負わなければなりません。子どもを抱っこして自転車を運転することは違反行為であり、転倒したり子どもが転落したりした場合、子どもの頭部などに重篤なけがをさせるおそれがあるので、やめましょう。
また、子守バンドなどを使用する場合は、子どもがすり抜けて自転車から転落しないよう確実に着用しましょう。
幼児用座席は、安全基準を満たした「SGマーク」が付いたものを選びます。販売店などで適切に取り付けて使用しましょう。
自転車に設けられている基準を確認し、同乗する子どもの数や身体の大きさに合うものを使用しましょう。幼児2人同乗用自転車であれば、小学校就学の始期に達するまでの子どもを2人乗せることが可能です。
また、スポーク外傷を予防するため、後輪にカバーがついた自転車を選びましょう。
バランスを崩して転倒しないよう、自転車のハンドルには物を掛けないようにしましょう。物が掛からない・掛けにくいハンドルにしたり、前輪にカバーをして物が挟み込まれない構造にしたりすることも対策として有効です。
自転車の事故予防策は、以下のサイトでも紹介されています。
子どもの自転車事故の多くは、交通ルールの違反により発生しています。
そのため、親子で交通ルールについて学び、話し合うことが重要です。また、自転車走行中は、同乗している子どもから目を離さざるを得ない瞬間がどうしてもあるので、幼児座席のシートベルトやヘルメットを適切に着用するなどの事故予防策(頭部の保護など)を講じましょう。
交通ルールを守り、いざというときのための事故予防策を講じることで、子どもを自転車事故から守りましょう。
緑園こどもクリニック 院長
山中龍宏先生(小児科医)
2輪の乗り物である自転車は不安定で倒れやすく、またスピードが出るため、自転車に乗っていて衝突した場合には身体に大きな力がかかり、ケガは重傷化します。そこで、大切な頭を守るために、どの年齢でもヘルメットを着用することが必要なのです。しかし、赤ちゃん用の自転車ヘルメットはありません。赤ちゃんを背負って自転車に乗ることは法律では認められていますが、抱っこでもおんぶでも、自転車が転倒した時の危険性は同じです。極力、抱っこやおんぶして自転車に乗ることは避けましょう。
専門家プロフィール
山中龍宏先生
小児科医・緑園こどもクリニック 院長。プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことをきっかけに、39年にわたって子供の事故予防に取り組む。2014年より特定非営利活動法人 Safe Kids Japanを設立。理事長を務める。
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