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vol.19
子どもを遊具の事故から守る予防策とは?

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子どもにとって公園や屋内遊戯施設の遊具は、夢中になって遊べる身近で楽しい存在です。しかし危険性も潜んでおり、実際に痛ましい事故も発生しています。本記事では、発生しやすい遊具や事故の種類や事故を予防するポイント等について説明します。

公園の遊具による事故の傾向について

まずは、事故やケガが発生している公園の遊具を確認しましょう。消費者庁に寄せられた、公園の遊具による子どもの事故情報は1,518件で、このうち遊具の種類が特定できている 1,369 件中、「滑り台」が 440 件と最も多く、次いで「ブランコ」、「鉄棒」、「ジャングルジム」などの遊具で事故が起きています。また、「中等症」以上の事故の約3割が「滑り台」によるものですが、そのほかの遊具でも「中等症」以上の事故が起きています。

遊具による子供の事故について(遊具の種類別)


(資料)消費者庁『遊具による子どもの事故に御注意!』を基に作成

また、受傷のきっかけが分かっている1,501 件をみると、「転落」の割合が最も高く、次いで「ぶつかる・当たる」となっています。

遊具による子供の事故について(受傷のきっかけ別)

発生しやすい事故の種類について

転落

滑り台やジャングルジムの頂上から転落したり、手が滑って雲ていから転落したりといった事故が発生しています。

ぶつかる・当たる

子ども同士がぶつかる事故や、子どもと遊具がぶつかる事故が発生しています。具体的には、滑り台を降りてきた子どもが台の下にいた子どもにぶつかったり、子どもが降りたばかりのブランコに他の子どもがぶつかったりする事故が発生しています。


消費者庁イラスト集より

挟む・挟まれる

遊具の柵などの隙間に、頭部や首が挟まって抜けなくなる事故が発生しています。過去には、ロープがクロスしたアスレチック遊具や、V字型の柵に首が挟まった事例があり、こうした事故は命の危険を伴います。
また、遊具の隙間に指が挟まり、指を切断した事例もあります。

(紐などで)首が締まる

遊具の突起や出っ張りなどに、衣類やカバンの紐が引っかかり、首が締まる事故が発生しています。

公園の遊具による事故を防ぐポイント

続いて、公園の遊具による事故を防ぐポイントを説明します。

子供の服装や持ち物に注意する

紐が付いた服やパーカー着用時、肩掛けカバン、水筒などを持った状態で、子どもを遊具で遊ばせると、紐やベルトが遊具に引っかかって思わぬ事故に繋がる可能性があります。特に、首が締まる事故は命に関わるため要注意です。

天候に気を付ける

直射日光の熱で遊具が熱くなっていれば、触っただけで火傷することがあります。特に夏場には、表面温度が80度近くになることもあるので、鉄棒や滑り台などの熱伝導率が高い素材でできた遊具は注意が必要です。
また、雨が降った後の水滴がついた状態の遊具で遊ぶと、手が滑って転落することがあります。遊具周りのコンクリートなども滑りやすくなっているので、前日に降った雨が残っている場合などは、公園の遊具で遊ぶことは控えましょう。

遊具の対象年齢を守る

遊具には対象年齢があるものがあります。遊具の対象年齢の表示を確認し、年齢に合った遊具で子どもを遊ばせましょう。
一般社団法人 日本公園施設業協会は、遊具の事故を減らすため、年齢表示や使用上の注意を喚起する安全利用表示シールを作成しています。

年齢表示シール

遊具ごとの正しい使い方を教える

滑り台で反対側から登る、柵を乗り越えるなど、本来の使い方でない遊び方をして、大きなけがを負った事例もありました。大きな事故につながることもあるため、正しい使い方を教えましょう。

公園の遊具の事故予防策については、以下のウェブサイトでも紹介しています。

屋内遊戯施設の遊具にも注意が必要

屋内遊戯施設は、天候や気温に左右されず、遊ぶことができるため人気を集めています。屋内遊戯施設の遊具は、エア遊具やボールプールなど、柔らかく角のないものが多いですが、消費者庁や国民生活センターには、次のような事故情報が寄せられています。

  • ・ビル屋上にある遊戯施設の飛び跳ねて遊ぶエア遊具から転落し、右腕を骨折した。
  • ・ショッピングセンターの遊戯施設内にあるボールプールに、90cmほどの高さから飛び込んだところ、底に手を直接ついてしまい、両手を骨折した。

屋内遊戯施設を利用する際は、事前に遊具の対象年齢や安全性に関する表示を十分に確認し、できるだけ、安全管理のための運営スタッフが配置されている施設を利用しましょう。また、接触時にケガに繋がるヘアピンや指輪などのアクセサリーは外すようにしましょう。

屋内遊戯施設での事故予防策については、消費者庁のウェブサイトでも紹介しています。


屋内遊戯施設のイメージ

子どもを遊具の事故から守るために

子どもが、公園や屋内遊戯施設の遊具を安心して利用するためには、保護者自身の安全意識を高めることが重要です。保護者がそれぞれの遊具の危険性を知り、子どもから「目を離さない」の前にできる事故予防策を実践することで、子どもを事故から守りましょう。

山中龍宏先生

緑園こどもクリニック 院長

山中龍宏先生(小児科医)

遊具は安全基準が定められており、定期的に点検する必要がありますが、予算の制約や専門家の不足などで、実際には放置されている場合もあります。遊具の下に入って頭を打つ子供がいたため柵でふさいだところ、その部分にできた隙間に首を挟んで死亡した例もあり、何か後付けすることはたいへん危険です。また、部品は、簡単に外すことができないようにする必要があります。自治体の中には、公園で遊具の不具合や損傷をみつけたら、スマートフォンやパソコンから通報できるシステムがあるところもあります。


専門家プロフィール
山中龍宏先生
小児科医・緑園こどもクリニック 院長。プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことをきっかけに、39年にわたって子供の事故予防に取り組む。2014年より特定非営利活動法人 Safe Kids Japanを設立。理事長を務める。

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