東京都では、都内で暮らす子育て中の保護者の方を対象に、子供の事故予防に関するアンケート調査を行いました。
子供をケガや事故から守るため普段意識して取り組んでいることや、事故予防に対して難しいと感じていること、またその理由についてなど、516名から回答が寄せられました。アンケートにご協力いただきありがとうございました。
この度のアンケート結果についてお知らせします。
子供の事故予防のために、普段意識して取り組んでいることとして「子供から目を離さない」が37.8%と最も多かった一方で、意識しているものの取り組んでいないとの回答でも26.2%にのぼりました。「目を離さない」という事故予防方法が最も浸透していること、また、目を離さない育児の難しさがうかがわれます。
次に取り組んでいる割合が高い回答は、順に「のどに詰まりやすい食べ物を与えない、または小さく切る」「子供に危険性があるものを使用禁止」「ヘルメットの着用」「誤飲やケガにつながるものを子供の近くに置かない」等で、3割を超える方が取り組んでいると回答しています。
一方、「ベランダやお風呂場に子供が一人で入らないよう補助錠を設置」や「住宅選びで子供に対する安全性を検討」は、取り組んでいると回答した人の割合が群を抜いて低く、2割に届きません。
今回のアンケート調査で、子供にとってケガや誤飲・窒息につながるものを近づけない、与えないといった身近で取り組みやすいものは比較的に取り組みが進んでいるのに対し、補助錠を設置する、または安全に配慮した住宅を選ぶといった住宅へのアプローチという目線での対策は、まだまだ一般的ではない実態が見て取れます。
また、本コラムでは、全回答者における割合をグラフにして掲載しておりますが、そのほかに0~3歳の保護者、4~6歳の保護者、それぞれ男性、女性という4つの分類で分析を行っています。
0~3歳のお子さんを持つ女性の保護者が最も事故予防に取り組んでいますが、子供が4~6歳の保護者になると、取り組んでいると回答した割合が下がります。また、女性よりも男性のほうが、取り組んでいると回答した割合が低くなります。
こういった特徴を踏まえて、東京都では、効果的な予防策の検討や情報発信を行っていきます。
事故予防について「意識しているが取り組んでいない」と回答した389名に、取り組まない、または取り組みにくいと感じる理由について質問をしました。
その結果、最も回答が多かった「子供が嫌がる」を理由にあげた人は34.4%と3人に1人以上もいました。次いで保護者全体で多かった回答は「コストがかかる」「時間がない」で、いずれも3割以上でした。
子供の事故予防への意識があっても、経済的な理由や忙しさに加え、子供が嫌がるからと子供の気持ちを優先する状況があることも対策が進みにくい大きな課題の一つであることが見えてきました。
今後、本プロジェクトで効果的な事故予防を考えるにあたって、子供が快適で嫌がらない予防策や、経済的に取り組みやすいかどうかといった点が重要だということが分かりました。
また、家庭内の事故による子供の救急搬送件数が減らない理由として「子供の行動が予想を超えている」と回答した人が63%、「気を付けていても偶然が重なる」と答えた人は53.9%にのぼりました。
事故予防への意識はありつつも、回答者の多くが予想できない子供の行動や、対策するための余裕のなさを理由に取り組みが進みにくい現状を実感していることが分かりました。また、「自分は大丈夫と思っている」との回答も2割近くあり、子供の行動特性や予防策の重要性についてさらに理解を促すことも課題だといえます。
本プロジェクトがミッションとして掲げているのは「事故が起きにくい環境づくり」です。今年度は、「目を離さない」の前にできることをやろう、環境を変えようといった、本事業のメッセージを伝えることを1番の目標としていました。
今回の調査では、516名の回答者全てにサイトと動画を見てもらい、その後の意識の変化についてもアンケートを取ったところ、「子供の事故予防に関する考え方が変わった」との回答は59.3%と6割近くにのぼりました。
中でも動画を見て「子供から目を離してもケガをしにくい環境をつくる」ことに取り組もうと思ったとの回答が29.7%と最も多く、実際に取り組んだとの回答も23.7%にのぼりました。
動画の視聴をきっかけに「子供から目を離してもケガをしにくい環境をつくる」ための意識の変化や取り組み始めた方が多くいらっしゃることが分かり、引き続き、皆さんの取り組みの役に立つ情報発信を強化していきたいと考えています。
この度のアンケート調査を通して、多くの保護者が子供の事故予防への意識を持ちながら、「忙しさ」や「コスト」、「子供が嫌がる」などの理由で具体的な対策になかなか取り組めていない実態が明らかになりました。
また、男女で予防意識に差があることも分かり、同年齢の子供を持つ男女を比べると、男性は女性に比べて予防意識が10%以上低い傾向にあります。男性の保護者に向けた情報発信も課題の一つといえます。
東京都では、本プロジェクトを通して、子育てに関わる保護者の方からの声や、事故データの分析結果、専門家の知見なども踏まえ、有効かつ実行しやすい事故予防策を分かりやすく発信していきます。
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