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vol.15
ペダルなし二輪遊具やキックスケーター 使用中の事故を防ぐには?

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ペダルなし二輪遊具やキックスケーターは、子どもにとって楽しく魅力的な乗り物です。一方で、危ない使い方をすると重大な事故につながる恐れもあります。本記事では、そうした事故の原因やシチュエーションをもとに、具体的な予防策を解説します。

ペダルなし二輪遊具などの乗り物でどんな事故が起きている?

ペダルなし二輪遊具(ペダルなし自転車)とは、ペダルがなく、子ども自身が足で地面を蹴って進むランニングバイクです。バランス感覚を養えるメリットがある一方で、走行中の思わぬ転倒や衝突によって以下のような事故が発生しています。

・3歳の子どもが下り坂を走行中に転倒し、頭と左肩を地面にぶつけて鎖骨を骨折
・5歳の子どもがヘルメットをかぶらずに乗って遊んでいたところ、頭から転倒して前額部に大きなこぶができた
・4歳の子どもが、午後7時頃に見通しの悪い交差点で走行中に車と接触して死亡

同様に、キックスケーターもリスクがある乗り物です。
東京都生活文化スポーツ局が一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)に住む1~12歳の子どもの保護者を対象として令和4年度に実施した調査によると、キックスケーター類の所有者780人のうち計275人(35.3%)が、「けがをしたことがある」(13.6%)及び「ヒヤリ・ハット経験がある」(21.7%)と答えました。

(資料)東京都生活文化スポーツ局『令和4年度ヒヤリ・ハット調査「公園等で使用するスポーツ用品(車輪のあるもの)による子供の危険」調査報告書』を基に作成

ペダルなし二輪遊具ペダルなし二輪遊具・キックスケーターでの事故の原因は?

では、ペダルなし二輪遊具ペダルなし二輪遊具やキックスケーターによる事故の原因にはどのようなものがあるのか、3つのパターンに分けて見ていきましょう。

パターン1:バランスを崩して転倒

バランス感覚が未発達の子どもにとっては、わずかな段差や傾斜などの路面の変化も危険です。段差や側溝のある場所でバランスを崩して転倒し、頭部や顔を打つ事故が多いです。

パターン2:スピードの出し過ぎ

走行中に加速し過ぎると、塀や縁石などの障害物や歩行者・車などを避けきれない恐れがあります。特に、坂道や傾斜のある場所では、スピードが出過ぎて制御できなくなり、事故につながるケースが多く見られます。
また、ペダルなし二輪遊具にはブレーキがなく足を地面につけて停止するため、スピードが出ている状態ではうまく止まれず、転倒する危険性もあります。

パターン3:遊具の不具合

キックスケーターやペダルなし二輪遊具の部品が壊れていたり、緩んでいたりする場合、使用中に事故が発生することがあります。特に、キックスケーターのブレーキや、ペダルなし二輪遊具のタイヤのナットなどの緩みは、大きな事故につながる恐れがあります。

ペダルなし二輪遊具ペダルなし二輪遊具・キックスケーターによる事故の予防策

次に、子どもの事故を予防するためのポイントを6つ紹介します。

公道や坂道では使わない

ペダルなし二輪遊具やキックスケーターは道路交通法では「遊具」に該当するため、基本的に公道での使用は禁止されています。公園などでのみ使用しましょう。

特にスピードが出過ぎる坂道や転倒する恐れのある路面の状態が悪い場所、段差や側溝がある場所、衝突のリスクがある混雑した場所も避ける必要があります。

ヘルメットやプロテクターを着用する

ヘルメットやプロテクターの着用も、子どもの命を守るために重要です。
消費者庁が実施した調査によると、ペダルなし二輪遊具の事故への対策として「ヘルメットの着用を行っている」と回答したのは、3歳の子どもで49.4%、2歳で50.5%、1歳で49.4%と半数ほどでした。
また、前出の東京都生活文化スポーツ局の調査では、キックスケーター類を使用する際にヘルメット・プロテクター等をつけていない子どもの割合は63.7%で、高い割合となっていました。
転倒しても大事に至らないよう、保護具を着用して使わせるようにしましょう。

子どもの成長に合わせた製品を選ぶ

製品のサイズや機能が子どもの成長段階に合っていない場合、操作がしにくく、事故につながる恐れがあります。身長や体重、対象年齢などを考慮して選んでください。

使用前に緩みやガタつきがないか確認する

ハンドルやシート、タイヤなどの部品に不良があると、正常に動作しなくなったり部品が外れたりする危険性があります。使用前に必ずチェックしてから乗りましょう。

定期点検の際は、販売店や自転車専門店に作業を依頼する

販売店や専門店で定期点検を行いましょう。ペダルなし二輪遊具を自転車として使用する場合の部品の取り付けも、販売店や自転車専門店に依頼すると安心です。

適切な使用方法、対策が子どもの楽しい時間を守る

ペダルなし二輪遊具やキックスケーターの事故は、坂道や公道など使用が推奨されていない場所で多く発生しています。ヘルメットなどを着用せずに走行すると、重大なけがや命に関わる事故につながります。使い始めるときは、広く平らな場所で、保護者が付き添って練習するとよいでしょう。

他にも、下記のようなガイドラインがあります。
子どもの安全を守るために、ぜひお役立てください。
東京くらしWEB『子供の事故防止ガイドを作成しました!
~公園や道路でのヒヤリ・ハット(キックスケーター、スケートボードなど)~』

国民生活センター『ペダルなし二輪遊具による坂道の事故に注意』
国民生活センター『死亡事故も!キックスケーター走行中の事故に注意』

山中龍宏先生

緑園こどもクリニック 院長

山中龍宏先生(小児科医)

乗り物に乗っていて大きなケガをするのは、スピードが出ているためです。スピードが早ければ早いほど、ぶつかった時に大きなケガを負うことになります。身体を守るために、頭にはヘルメットをかぶり、ひじやひざ用のパットを付ける必要があります。ヘルメットは、頭のサイズにあったものを選び、きちんと装着しないと効果がありません。


専門家プロフィール
山中龍宏先生
小児科医・緑園こどもクリニック 院長。プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことをきっかけに、39年にわたって子供の事故予防に取り組む。2014年より特定非営利活動法人 Safe Kids Japanを設立。理事長を務める。

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