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vol.16
子どもを「はさむ・はさまれる」事故から守る予防のポイントとは?

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家庭内でも外出先でも発生する身近な子どもの事故として、「はさむ・はさまれる」事故があります。特に多いのは、どこにでもある「ドア」に指を挟むケースです。本記事では、「はさむ・はさまれる」事故に多い要因とともに、予防するためのポイントをお伝えします。

子どもの「はさむ・はさまれる」事故の特徴

東京消防庁によると、令和5年に「はさむ・はさまれる」事故で、1,995人が救急搬送されており、うち0歳~5歳の乳幼児は336人を占めています。

0歳~5歳の「はさむ・はさまれる」事故の要因を年齢別に上位5位まで見ると、すべての年齢で「手動ドア」が1位となっています。また、行動範囲の広がる3~5歳になると、自転車のチェーンや鉄道車両の戸袋に挟まれる事故など、家庭内だけでなく、外出先でも多く発生するようになります。


(資料)東京消防庁『救急搬送データからみる日常生活の事故(令和5年)』を基に作成

「はさむ・はさまれる」事故の実態

次に、「はさむ・はさまれる」事故の実態について、事故発生の多かった主な要因ごとに説明します。

手動ドア

要因として最も多い手動ドアによる事故としては、次のような事例があります。
・子どもがそばにいると気付かず、保護者がドアを閉めて子どもの指を挟んだ
・子どもがドアを開け閉めして遊んでいた際に誤って指を挟んでしまった

爪の欠損による出血や骨折、指の切断にいたる事故も報告されています。子どもが後ろからついてきているのに気づいていないときなど、保護者が危険を予測できない状況下で、子どもがドアや蝶番のすき間に手をおいたときに事故が発生するケースが多くなっています。

消費者庁イラスト集より

椅子などの家具類

椅子をはじめとする家具類も「はさむ・はさまれる」事故の要因の一つで、椅子の折りたたみ部分や肘かけと机の間に子どもが手指を挟んでしまう事故などが発生しています。そのほか、折りたたみ式の踏み台やベビーゲートなどのすき間に挟まれる事故にも気をつけましょう。

自転車

自転車のチェーン付近に手を入れて挟んでしまう事故が発生しています。
NITE(製品評価技術基盤機構)によると、子どもが自転車を停車状態でペダルを逆回転させて使用中に、ほかの子ども(特に1歳から2歳)が自転車に近づいて、回転部分に手を触れることで発生しています。

>自転車「13.こどもが自転車で指を切断2」|NITE(製品評価技術基盤機構)

電車のドア、戸袋・エレベーター

電車のドア、戸袋に挟まれる事故も起こっています。ドアが開く際に、ドアや戸袋に触れていて挟まれるケースが多いです。
東京消防庁によると、令和5年までの5年間で電車のドア、戸袋に身体の一部が挟まれる事故により、0歳から5歳までの乳幼児が80人搬送されており、うち72人が「戸袋」に挟まれる事故となっています。
また、エレベーターでも同様の事故が発生しています。指や腕を骨折する場合もあり、注意が必要です。

>電車のドア、戸袋へのはさまれに注意! | 東京消防庁

エスカレーター

エスカレーターではインレットと呼ばれる手すりの引き込み口(下図参照)に手を伸ばしたことで巻き込まれたり、靴やサンダル、衣服が、ステップと側面の間に挟まれたりする事故が起こっています。また、挟まってしまった靴やサンダル、衣服を取ろうとして手指を挟むケースもあります。

インレット

「はさむ・はさまれる」事故の予防策

次に、「はさむ・はさまれる」事故の予防策を説明します。

手動ドア

ドアの蝶番部分に隙間防止カバーや指挟み防止用のストッパーなどの事故防止グッズを活用しましょう。また、風などでドアが勢いよく閉まることがありますので、ドアストッパーなども使用しましょう。住宅の新築やリフォームの際は、指挟み防止仕様のドアや、開閉を緩やかにするドアクローザーなども検討しましょう。
ドアに挟まれる事故の予防策については、東京くらしWEBでも紹介しています。
>ドアによるはさみ込みに注意しましょう!|東京暮らしWEB

椅子などの家具類

子どもが椅子のすき間に手をかけないように指導し、折り畳み式踏み台などについては手の届かないところで保管しましょう。指を挟みやすい可動部や※かん合部がない、一体構造や組立式の商品の選択がおすすめです。また、クローゼットや棚は、手動ドアと同様、扉に隙間防止カバーや指挟み防止用のストッパーなどの事故防止グッズを活用しましょう。

※かん合部 … 部品やパーツ同士をはめ合わせた部分のこと 

自転車

幼児用自転車は、チェーンやギアが覆われたチェーンケース付きの安全な製品を選びましょう。また、他人の自転車には不用意に触れないよう指導しましょう。

電車のドア、戸袋・エレベーター

ドアに挟まれないよう、電車やエレベーターの混雑時に、無理な乗り降りをしないようにしましょう。また、戸袋に挟まれないよう、ドアの開閉時に、手や腕、足などをドアや戸袋に触れさせないようにすることも重要です。

エスカレーター

ステップと側面の間にサンダルや靴、衣服が巻き込まれるのを防ぐため、手すりによりかからずに必ず黄色い線の内側に立たせましょう。
また、インレット付近で遊んだり、手すりから身体を乗り出したりするなどして発生している事故もあるため、危険性を伝えて、エスカレーターの近くで遊ばせないようにしましょう。

「はさむ・はさまれる」事故から子どもを守るために

子どもの「はさむ・はさまれる」事故は、遊んでいるときや無意識のうちに挟まれる恐れのあるものに触ったり近づいたりしたときに多く発生しています。親子で危険な場所やものを知り、事故の予防に取り組むことが重要です。痛ましい事故から子どもを守るために、身近なところから安全対策を講じましょう。

山中龍宏先生

緑園こどもクリニック 院長

山中龍宏先生(小児科医)

乳幼児は、いろいろなものに触ったり、撫でたりします。子どもの指は細いため、わずかな隙間でも入ってしまいます。指が入った状態で隙間が閉じられると挟み込まれることになります。手の指だけでなく、ドアの下のすき間に足の指を挟むこともあります。また、上着のすそやズボンのひもがドアに挟まれたり、自転車の車輪に引っかかって転倒することがあります。時には、マフラーが挟み込まれて首が絞めつけられることもあります。


専門家プロフィール
山中龍宏先生
小児科医・緑園こどもクリニック 院長。プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことをきっかけに、39年にわたって子供の事故予防に取り組む。2014年より特定非営利活動法人 Safe Kids Japanを設立。理事長を務める。

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