子どものやけどは、家庭内でよく起きる事故の一つです。子どもが成長とともに、さまざまなものに興味を持ちはじめると、親がちょっと目を離した隙にやけどをします。とくに幼い子どもは、大人の予想を超えた行動が事故につながることも少なくありません。
今回の記事では、事故の原因や予防策、年齢別の傾向と予防策について紹介します。ぜひご家庭の安全な環境づくりにお役立てください。
子どもは大人よりも皮膚が薄いので、同じ温度でも深いやけどになりやすく、傷跡が残ったり重症化したりする恐れもあり、注意が必要です。
消費者庁と独立行政法人国民生活センターの調べによると、令和2年12月までの10年間で、炊飯器や電気ケトルなどによる2歳以下の乳幼児のやけどの事故は333件、コンロによるやけどの事故は50件。その他にも、加湿器やストーブなどの暖房器具に触れるなどして、合わせて約2,000件ものやけどの事故が確認されています。
また、東京消防庁によると、令和5年にやけどの事故で救急搬送された1,282人のうち、年齢別で見ると、0歳から4歳までの342人が最も多く、全体の約3割を占めていることからも、子どものやけどは大怪我につながりやすいことがわかります。
やけど事故から子どもを守るためには、事故の原因となるものを保護者がきちんと理解して生活環境を整えるなど、事前に対策をすることが大切です。
家の中で子どもがやけどを負いやすい、代表的な場所がキッチンです。オーブンやグリル付きコンロ、鍋やフライパンなどの熱い調理器具、電気ケトルや電気ポットからの熱湯、調理中のスープや熱湯、炊飯器の蒸気などが原因となりやすいです。
やけどの事故を防ぐためには、調理中は子どもが近づかないように柵を設置することが大切です。調理中の鍋の取っ手は奥に向けるなど、細かい配慮もリスク軽減につながります。
リビングでは、ストーブやヒーターなどの暖房器具、アイロン、ヘアアイロン、加湿器の蒸気など、日常生活で使用するものに、事故の危険が潜んでいます。
とくに秋冬の寒い季節は、暖房器具によるやけどの事故が増える時期。小さな子どもが触れてしまうと重篤なやけどになる可能性があります。暖房器具には専用のガードを設置するなど、子どもが直接触れられない環境を作ることが重要です。
また、電気ポットやホットプレートをリビングで使用する際は、子どもの手の届かない場所に熱源を設置しましょう。また、安全に配慮された製品を使用したり、電源コードの配置に気を付けたりするなどの予防策を実施しましょう。
浴槽のお湯や熱いシャワーなど、お湯の温度設定ミスによるやけどが発生している浴室。 とくに乳幼児は皮膚が薄いため、大人にとって低温でもやけどのリスクがありますので注意しましょう。
子どもを一人でお風呂に入れない、お湯の温度を必ず確認する習慣をつける、給湯器の設定温度をあらかじめ調整するなど、安全な入浴環境を整えることがやけどを未然に防ぎます。
ライター、マッチ、花火、線香、タバコ、加熱式タバコなどもやけどの原因となり得ます。使用後は放置せず、すぐに片付けることを心がけ、子どもの手の届かない場所に置くようにしましょう。
低温やけどにも注意が必要です。湯たんぽ、電気毛布、ホットカーペット、使い捨てカイロなどは、低温でも長時間おなじ部位に触れているとやけどの原因となります。
さらに、高温になるパソコンや携帯電話の充電器も、子どもの手の届かない場所に置くと安心です。
子どもの成長や発達段階にあわせて、やけど事故の傾向や予防策が変わってきます。年齢ごとの行動の特徴を理解すれば、日々の小さな工夫で、事故予防につとめることができます。
0~2歳では、次のような点に注意が必要です。
離乳食が熱すぎたり、入浴時のお湯が高温になっていたりすることでやけどを負うケースがあります。
▼予防策
・保護者が事前に温度を確認する
やけどの事故は、つかまり立ちや伝い歩き、ハイハイで行動範囲が広がる、1歳前後に多く起きています。熱いものを知らずに触る・掴む事故が多いので、保護者はあらかじめ予防策を講じましょう。
▼予防策
・子どもの手が届くところに熱いものを置かない
・やけど防止策がされている電気製品を使う(蒸気が出ない、お湯がこぼれないなど)
3〜6歳は、さらに活動範囲が広がり、大人の真似をしたがる時期です。キッチンなどの危険が多い場所でコンロの加熱部分や熱い鍋、暖房器具に手を伸ばしてやけどしやすいことを覚えておきましょう。
▼予防策
・危険な器具に触れるとやけどや火事につながることを伝える
・触ってはいけないものをルールとして教える
子どものやけど事故は、日々の小さな工夫で防げます。また、成長・発達段階に合わせた環境の整備や、子どもにわかりやすく危険性を教えることが大切です。家庭内の危険な場所やものを把握し、対策することで、事故のリスクを軽減しましょう。
万が一の事態に備え、応急処置についても知識を深めておくと安心です。子どもの健やかな成長と安全を守るために、ぜひ家庭内の予防策を見直してみましょう。
乳幼児のやけど事故の予防策については、東京くらしWEBでも紹介しています。
緑園こどもクリニック 院長
山中龍宏先生(小児科医)
生後10か月から1歳半のあいだに、3人に1人はやけどすると言われています。その時期には、テーブルクロスの使用はやめ、熱湯が出る加湿器もやめましょう。年齢が高くなると、花火によるやけどが多くなります。ふだんは湯漏れ防止機能付きの電気ケトルを使っていても、実家やホテルの電気ケトルでやけどをすることもあります。ホットカーペットの上に寝かせていた乳児では、低温やけどをすることもあります。
専門家プロフィール
山中龍宏先生
小児科医・緑園こどもクリニック 院長。プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことをきっかけに、39年にわたって子供の事故予防に取り組む。2014年より特定非営利活動法人 Safe Kids Japanを設立。理事長を務める。
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