「子供から目を離しちゃだめ」「○○に気を付けよう」…こんな風に周りから言われても、ほんの一瞬に思いもよらない事故が起きることもあるし、具体的にどう事故を防げばよいか分からないこともありますよね。
頻繁に起こる事故やケガの事例を知ることは、非常に大切です。知っていれば防げる事故があるからです。ただ、薦められている予防策すべてを行うことは難しいですし、子供の年齢や成長・発達段階に応じて事故の種類やリスクは変化します。すべての予防策が皆さんのご家庭や子供の状況にあうとは限らないでしょう。
そこで、東京都では、年齢層別に生じやすい具体的な事故事例や予防策をとりまとめたデジタルハンドブックを作成しました。このデジタルハンドブックでは、事故予防の基本的な考え方も知ることができます。
ハンドブックのタイトルは「カエルくんと学ぶ『変えられるもの』」。かわいいカエルの先生とともに、9つの「変えたい」事故事例について、何を「変える」ことができるか、一緒に考えていきます。
事故が起こる原因は様々で、複雑な要因が絡んでいます。まずは、「変えたいもの(=事故にあう行動や状況)」を整理して、何が「変えられるもの」なのか、何が「変えられないもの」なのかを考えてみましょう。
無理に「変えられないもの」を「変えよう」とするのは、取り組む負担が大きく、効果的な事故予防ではない可能性があります。
加えて、事故予防の方法を考えるための着眼点が3つあります。①危ないところを直す ②学ぶ・伝える ③ルールを変える、です。
乳児のうちは、保護者が①の危ないところを直す予防策がほとんどでしょう。子供が大きくなってきたら、②学ぶ・伝えることが可能になり、子供の行動も「変えられるもの」に入れることができるかもしれません。
このように「変えられるところを変える」という考え方をベースに、ご家庭の状況に応じて、効果的な事故予防に取り組むことが大切です。
詳細は、ぜひハンドブックをご覧ください。
(参考)ご説明した内容はこちらの動画で分かりやすく説明しています。
ここまでご紹介していたのは、保護者を対象とした乳幼児編。
この他にも、小学校低学年、小学校高学年、中高生を対象としたハンドブックがあります。
それぞれの対象年齢層に合わせた身近な事故を事例として、クイズ形式や漫画で楽しく事故予防の考え方を学ぶことができます。
ハンドブックの制作にあたっては、都内の小・中・高等学校や学童クラブでワークショップを行い、ハンドブックに盛り込む内容や具体的な表現方法について、たくさんのご意見をいただきました。子供たちのアイディアを詰め込んだハンドブック、きっと子供たち自身も楽しく読んでくれると思っています。
これまで、本プロジェクトでは、小学校や中学校で事故予防をテーマに授業をする機会がありました。その際の子供たちの反応は「同じ年代の子たちがこんなにケガをしているの!?」「ケガは、偶然で仕方ないと思っていたけど、予防できるんだ!」「事故事例や事故要因ランキングをもっと知りたい!」といったもの。思っている以上に、身の回りで起こっている事故に興味を持ってくれています。
皆さんもぜひ、お子さんと一緒に読んでみてくださいね。
今回ご紹介した子供の事故予防ハンドブックは、事故予防の基本を知っていただくことを目的としたものです。東京消防庁や福祉局をはじめとした都庁の各部署や消費者庁など、多くの機関が事故予防について学べる冊子やツールを作成しています。
その中から、皆様のニーズやお好みにあったツール・情報を選んでいただけるように、ウェブサイト「東京都こどもセーフティプロジェクト」では、「もっと詳しく!事故予防お役立ちツール」というページをご用意しています。
本デジタルブックのほか、動画や補助事業の情報も掲載していますので、のぞいてみてください。
また、本ウェブサイトには、お子さんの月齢・年齢に合わせて、いつどんな事故が起こりやすいかタイムラインで表示する、「事故予防チェックカレンダー」という機能もあります。
定期的にカレンダーを見てチェックし、起こりやすい事故を頭の片隅に入れておくだけでも、事故やケガを予防できる可能性が高まります。こちらもぜひご活用ください!
緑園こどもクリニック 院長
山中龍宏先生(小児科医)
起きる事故のパターンと、その時の月齢、年齢はほぼ決まっています。「事故は、予測し予防できるもの」という意識を持って、まずは「変えられるもの」から、事故予防に取り組みましょう。このプロジェクトのコンセプトのように「“目を離さない”の前にできること」を考えてみませんか。
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